映画とご飯

映画と外食。

ゴーストバスターズ

この映画は学園ものではないが、その背景に学園ドラマが見え隠れする。クリスティン・ウィグ演じるエリンとメリッサ・マッカーシー演じるアビーがどのような学生時代を過ごしてきたか、思わず想像してしまった人は多いのではないだろうか。心霊に興味のある女子生徒というだけで、学園ヒエラルキーの最下層に位置していたに違いない。もしかしたら『glee』みたいに、廊下ですれ違いざまにコーラーをぶっかけられていたかもしれない。二人の友情は確かだっただろうが、周りからはいじめられていただろう。そっとしてあげたらいいのにという種類の人間にむごたらしいNO!をつきつけてくるのがアメリカの学園生活であるらしいのは多くの映画で学んできた。

エリンは、そんな立場から抜け出すために、コロンビア大学で物理学博士として勤務しており、終身雇用の審査を控えているところ。ところがAMAZONで、昔アビーとともに執筆したゴースト研究本が販売されており、審査に差し障ると危惧したエリンは販売を取り下げてもらおうと、ヒギンズ理科大につとめているアビーのもとに出かけていく。

アビーはちょっと狂気じみた発明家ジリアン・ホルツマン(ケイト・マッキンノン)とともに今もゴースト研究をつづけており、彼女にとって今やエリンは裏切り者。しかし、この後一緒に出向いたオルドリッジ家でほんもののゴーストに出逢い3人は大興奮! そこで撮影した映像をYouTubeに挙げて話題になるも、大学側に見つかって首になってしまうエリン。YouTubeの映像のあとに、それをつきつけられて言い逃れもできないエリンというカットのつなぎが最高で笑ってしまう。監督のポール・フェイグはこれまで、お下劣な言葉を連発させるのが得意だったけれど、今回はR指定を逃れるためにずいぶん控えたようだ。下ネタがなくても十分面白いですぞ。

ポール・フェイグとクリスティン・ウィグとメリッサ・マッカーシーは『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』でもタッグを組んでおり、これがあまりにもあまりにもなブライズメイズだったので、本作では二人がかわいらしく見えてくる!

ところで、ゴーストに対して笑顔で「Hi!」って言ってる姿は、『マーズ・アタック』の火星人を迎えるアメリカ人の姿を思い出してしまった。友好的に迎えているのに相手は容赦なく攻撃してきてあわてふためくアメリカ人。それと同様のお人よしアメリカ人の姿にまたまたふきだしてしまった。

結局アビーも大学の研究にふさわしくないと追い出され、三人は超常現象の悩みを請け負う会社を立ち上げる。この展開、活動用の車に霊柩車ながらもキャデラックを調達してくるところなんかもオリジナル『ゴーストバスターズ』を忠実に再現している。

ゴーストの存在を信じない専門家ビル・マーレイが出てくるのも洒落ている。オリジナルで彼はどちらかといえば超常現象を利用してナンパするような詐欺師的なキャラだっただけに、ナイスな配役というところか。地下鉄につとめていたパティ(レスリー・ジョーンズ)、想像を絶するほどおバカな美男子(クリス・ヘムズワース)が仲間に加わる様子は学園のいけてない系文科系サークルに仲間が増えていくような面白さがある。

で、一連のゴースト騒ぎには、世を恨む男の存在があった。この男の学生時代もまさに目に見えるようではないか。この男が作った霊を呼び寄せる装置は、なんとエリンとアビーの共著であるゴースト本を参考にしたものだった。本に書き込まれた落書きなどがビジュアル的によい感じだが、彼はとことんこの本を読み込んだらしい。ある意味、彼女たちと彼は同類なのだ。おそらく似たような学生時代を送ったことだろう。しかし彼が狂気に走ってしまったのは、エリンにとってのアビー、アビーにとってのエリンのような存在がなく、孤独であったせいかもしれない。

ゴーストを退治しても、ゴーストの存在が人々をパニックにしてしまうという理由で市長に隠ぺいされてしまうなど、相変わらず世の中は彼女たちに厳しいのだが、ラストの大パニックでの活躍ぶりにはしびれてしまう。とりわけ、ホルツマンの二挺拳銃風アクションのカッコよさときたら! こりゃ誰もがうなるでしょ!!

それからあのシーン、ここから踊ればいいのにと思っていたら、エンディングできっちりやってくれて大満足。期待をはるかにうわまわる傑作でありました。