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[映画]アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー

映画の冒頭、自身の独特な服装を解説してくれるアイリス・アプフェル。自分がデザインしたというスニーカーは、カラフルな鳥のイラストがはいっていて、欲しい!とまず思ってしまった。

アイリス・アプフェルは、類まれなるファッションセンスと集めに集めた貴重なコレクションの数々で、80才を過ぎてから見出されたファッションアイコンだ。時にはデザイナーであったり、ファッションアドバイザーであったり、ファッションモデルだったり。まさに好きなものがそのまま仕事になってしまったという典型の人。若いころは、古いデザインの壁紙を好む人たちのために夫とともに世界中を飛び回り、ホワイトハウスの内装の仕事もしていたらしい。夫が「トルーマンのころ」と言い、またケネディ夫人であるジャクリーンの話もでてくるので、40年代~60年代くらいのかなり長い間、従事していたスペシャリストだったのだろうか。

ファッションや美へのたゆまぬ追求というか、そうせずにはいられない好奇心というのか、ともかく好きなことに夢中になっている人っていうのは観ていて本当に楽しい気分になってくる。

雑貨屋やブティックなどで嬉々としている様子や、ファッションショーでモデルをみつめる生き生きした表情など、アイリス・アプフェルの魅力が存分に映しだされている。

94歳にして今なお溌剌としているアイリス・アプフェルだけれど、高齢者の抱える不安、子どもをつくらなかったことなども言及されている。子どもを作らなかったことの理由をきかれ「全てを手に入れるのは無理だとわかっていたから」と応えている。私はここで,ニューヨークのファッションフォトグラファー、ビル・カニンガムのことを少し思い出した。ドキュメンタリー映画ビル・カニンガム&ニューヨーク』で恋人はいたかと聞かれ「いない」と答えていた彼。彼らほどの才能に恵まれていても人間は全てのことを手に入れられない「あきらめることも必要なのよ」とアイリス・アプフェルはいう。

そしてこれほどのコレクターでもあるアイリスが「人は何も所有できない」と語るのも示唆的だ。映画終盤、彼女の思い出がたっぷりあるコレクションの品々が売るために運びだされていくシーンがある。勿論金銭的なこともあるだろうけれど、それは次の世代へ譲り渡すということでもある。彼女は大勢の仲間とともに、若い大学生が業界(社会)で生きていくための実利的な講座も開いている。講師の一人の「あらゆることからヒントを得るのだ!」という言葉がまっすぐに響いてきた。それはアイリス・アプフェルの生き方そのものだ!