毎日散歩

本と映画と音楽と、ときどき珈琲

[映画]これが私の人生設計

監督:リッカルド・ミラーニ

冒頭、超田舎育ちのヒロインの神童ぶりが描かれる。幼いころから絵に才能を見せるも、その傑作が家族には理解されず暖炉に放り込まれていく様子が哀しくも笑える展開。学校の教師が才能を発見し、やがてローマ大学で優秀な成績を残し、現在ロンドンで建築家として働いている。しかし、この雨の多い街は彼女には厳しかったらしい。雨が雪に変わったある夜、スパゲッティにほんのわずかの(なんでこんなに少ないのか?)のソースをかけて侘びしそうに食べる彼女はある決心をする。懐かしいイタリアに帰ること。しかし、建築家仲間にそのことを告げると、彼らは固まり無言で彼女をみつめる。「私何かへんなこと言ったかしら」。

ここまでおよそ10分ほど。ヒロインのセレーナ・ブルーノに扮するパオラ・コルテッレージは、若いころのリース・ウィザースプーンを彷彿させるコメディエンヌぶりを発揮している。

イタリアに帰った彼女は、インテリアや墓碑銘の仕事などをしながら父の形見のオートバイを乗り回し悪戦苦闘の毎日。オートバイを悪ガキにまんまと騙し取られ、生活のためにイタリア料理店でアルバイトまでするはめに。各国から訪れる客に料理の説明を求められ、様々な言語を駆使する彼女(日本語もお上手!)。そんな彼女を見てイケメンオーナーは「何者なんだ?」と問いかける。

そう、こんなに優秀な女性がアルバイトで生活をせざるをえないといけないというイタリアの現状にびっくり。イタリアってこれほどまでの男社会だったのか。面接で合格しても「妊娠」したら解雇という契約だったり、ヨーロッパってどこももっと進歩的かと思っていたら違うのね。

セレーナは盗まれたオートバイを追ってたまたま出くわした集合住宅で、住人の中年女性と知り合う。住宅の似たような外観のため、迷子になるという彼女は絵の具で自分の家までの印をつけていた。そこでセレーナがみかけたのは、集合住宅の再開発案を募集しているポスター。彼女はそのコンペに応募しようと考える。一方で、オーナーとの恋は徐々に進行しているように見えた…。オーナーに誘われでかけたバーで、オーナーが突然『フル・モンティ』や『マジック・マイク』ばりにステージに上がって踊りだし、自慢の肉体美を披露する展開に爆笑。なんと彼はゲイだったのですね。そのため、奥さんと別れて一人暮らしをしているのだとか。彼にすっかりときめいていたセレーナは愕然としてしまう。恋は敗れたものの、彼女たちは友人として親交を深めていく。彼女の家のあまりの狭さに自分の家にくるように誘うオーナー。二人は同居することになり、コンペの仕事を大量に持ち込む彼女。そんなコミカルな日常を経ていざコンペへ。ところが、ここでも男性優位社会は揺るぎなく、審査委員たちは「セレーナ・ブルーノ」は男性に違いないと思い込んでおり、目の前の彼女に彼はどこなのかと尋ねてくる始末。とっさに自分は代理人で、「セレーナ・ブルーノ」は日本の大阪に出張中だと応えてプレゼンを始めてしまう。東京でもなければ京都でもなく「大阪」というのがよいですね(笑)。そしてなんと彼女の案件が採用される。さて、さてどうなっていくのやら。

日本でも2010年代だというのに「昭和初期の遺物」みたいなものが未だにごろごろしており、男性社会の困ったものがまだまだ溢れていたりするのだが、イタリアも事情は同じらしい。そういったものにあぐらをかいた権力の権化みたいなものに、これまで耐えてきた人たちが「ノー」をつきつけるラストが気持ちいい。

場末に立つ巨大な集合住宅もなかなか魅力的な空間だった。建築映画としてもきちんと記憶に残しておきたい。