毎日散歩

本と映画と音楽と、ときどき珈琲

サリンジャーを読み直しています

「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」を読了。兄シーモアの結婚式に出席するためにバディは軍隊から休みをもらってニューヨークへ帰ってくる。しかし肝心の式に兄は現れず、花嫁は泣きながら退出し、バディは成り行きで花嫁の関係の出席者とともにタクシーに乗り込みます。タクシーの中では介添役の夫人がシーモアの悪口を言い始めます。介添夫人はバディがシーモアの弟であることも知っており、バディは彼女の言葉を思わず否定してしまう一幕も。そんなとき、タクシーはパレードにぶつかって動かなくなり、彼らは車を降りて喫茶店にはいろうとします。しかし喫茶店は閉まっており、バディはふと自分たちのアパートに彼らを誘う。そこで彼はシーモアの日記を見つけその断片が紹介されます。バディは思わず飲めないアルコールを口にし、介添夫人たちになんとか飲み物をこさえます。花嫁の家と連絡がとれた介添夫人たちはアパートを出て行きます。

ストーリーにあらわすとこれだけの話なんだけど『ナイン・ストーリーズ』の「バナナフィッシュにうってつけの日」で自殺する男性がシーモアということを知っている読者はなかなか複雑な感情をあちこちに飛ばしながら読み進むことになります。出てくる人物の容姿、姿形までも容易に想像することができ、小さな耳の悪い老人とバディのやりとりにほっとさせられもします。そしていつものようにサリンジャーの作品に出てくる女の子の愛らしさときたら。

グラース兄弟の一人、ブーブーがバディに書いた手紙でフラニーを記述したのが以下の文です。

フラニーといえば、先週のあの子の放送聞いた? 四つの時分、誰もうちにいないときにはいつも、アパートの部屋の中を飛び回っていたという話を、詳しく、とてもかわいらしくしゃべったのよ。今度のアナウンサーは グラントよりもダメ―言うなれば、昔のサリヴァンよりもダメね。きっとあの子が飛ぶことができると夢想しただけだろう、なんていうんだもの。あの子は、あ くまでもそうじゃないってきかないの。それがまた天使みたいなのよ。飛べたことはちゃんと分ってる、だって降りてくると、いつも手の指に電燈の球に触った 埃がついてたんだもの、ですって。

 



天使ってやっぱりいるんだよ