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そして医師も死す

D・M・ディヴァインのデビュー二作目『そして医師も死す』読了。

 

そして医師も死す (創元推理文庫)

そして医師も死す (創元推理文庫)

 

D・M・ディヴァインの作品は、ミステリボックスから出た数冊を始め、翻訳されたものは、全て読んでいる。ジャンルとしては本格推理で、犯人の意外性などミステリとしての面白さはいうまでもないけど、人間描写が丁寧で、どの登場人物たちにも息を吹き込み、ロマンスの要素もあり、普通の小説としての面白さもあるところが、ディヴァインの最大の特徴だろう。

大概は、大きな挫折を追った主人公が、事件に巻き込まれ、過去に恋愛関係だった女性と再会し、心揺らしながら、人生に打ち勝っていくというパターンが多い(ような気がする)が、本作の主人公、医師のアラン・ターナーは他のどの作品よりもちょっと短気でおっちょこちょいのところがあるように思う。尤も、ユーモア小説的な要素はまったくないんだけど。それにしても今回は一癖も二癖もあるいやなやつがいっぱい出てきて、結構私も読んでいて主人公以上に怒りっぽくなっていた気がする。ただ、彼らにしてみたら、まったく忠告を聞かず、自分が納得するまで動き回る主人公の行動の方がいらいらの対象であろう。ミステリの主人公ほど人の意見を聞かない種類の人間はいないかもしれない。