みや古食堂(京都・嶋原商店街)
輪違屋さんを出て、歩きますが、この暑さ尋常じゃない。あとで、京都のこの日の気温は39度をこしていたことを知りました。しかもこの界隈、この時間帯、あまり影がない。炎天下の中を歩くわけです。ほんの100メートル歩くだけで汗だらだら・・・。思わず銭湯にでも入ろうかと思ってしまいました(入ればよかったかも。バスタオル付き1000円って書いてあった)。
どこかで休憩したいけど、きんせ旅館(一階はカフェ)はまだ開いてないし、吉原大門近くの喫茶店「詩織」は多分ホットコーヒーしかないし(いや、違ってたらごめんなさい)。どこかに喫茶店はないものか・・・、京都市中央市場の方に回ればあるんだけど、なるべく近くがいいなぁ、と嶋原商店街をふらふらと歩いてみました。島原の門前町として歩んできた商店街。喫茶店らしき建物はみんなしまってる・・・。その中に、「氷」の旗を出した食堂がありました。ショーケースにもかき氷があります!で、入ったのが、「みや古食堂」。壁にはずらずらとメニューが。かなり豊富でしかもお安い!
かき氷を食べるはずが、冷やし中華を頼んでおりました・・・。このような丼鉢で出てくる冷やし中華はちょっとめずらしい気がする。冷たくて美味しい~~!
壁には太夫道中の写真がありました。この商店街での写真でだいぶ前の写真だということです。
輪違屋(京都・島原)
本年度の「京の夏の旅」は、輪違屋(わちがいや)が特別公開されています。旧花街・島原で元禄年間の創業以来(創業当時の名は「養花楼」)営業を続ける唯一の置屋。普段は中は観られません。
襖には当時の太夫が常連さん宛に書いた恋文の下書きが貼られています。近藤勇の書が貼られた屏風もあります(二階には桂小五郎書の掛け軸が)。
西側の庭。竿の部分が長いのが特徴。はね木を利用しているそうです。
こちらは才色兼備で一番人気だった吉野大夫の書(恋文)で、額装には室町時代の布(一部)が使われているそうです。
二階も公開されていましたが、写真はNG。今回の夏の旅のパンフレットの表紙にもなっている「傘の間」(松竹梅の床の間も見もの)、壁に本物の紅葉を塗り込んでかたどった「紅葉の間」などを拝観しました。これらは後にお茶屋として兼業するために増築されたものだそうです(明治4年頃)。階段の手摺は、百日紅(さるすべり)の木が使われているそうです。
島原大門。
喫茶ベニス(神戸・兵庫区)「B」の謎(2018年8月一杯で閉店されてしまいました)
川崎重工(株)から新開地本通りにかけての通りに面したところにある兵庫区東出町の「喫茶 ベニス」。店内は広々としていて、背もたれの高い二人がけの椅子がユニークです。椅子には「B」という頭文字が掘られています。
ベニスなら「V」じゃないの? でもヴェニスじゃなくて「ベニス」だから「B」なのかしら。でも映画で「ベニスに死す」っていうのがあったし、とかつまらないことを考えていたのですが、マスターとお話をしている時に謎が解けました(「B」か「V」かをこちらから聞いたわけではありません)。
このお店、今のマスターが受け継いでから50年以上がたっているらしいのですが、その二代前の持ち主まではわかっているそうです。で、前の持ち主の時に、お店の名前を変えたそうで、もともとは「ベニヤ」だったのを「ヤ」と「ス」を変えて「ベニス」にしたのだとか。そういういきさつなら「B」でおかしくないですよね。
震災ではガラスが三枚割れ、ドアが傾いたそうです。ドアをよく見ると、上と下で、板の大きさが違っています。
アイスコーヒーとトーストを頼んだのですが、それでたったの300円。びっくりしていると、「今度来はった時は店ないかもしれん。あんまり安すぎて人が来ないんよ」とおっしゃられていて、「えーそんな、また来ますから、ずっと続けてください」と言うと、笑って頷いておられました。
みんな「ベニス」に行くんだ!「ベニス」に行こう!
ワールドコーヒー 京都商工会議所店 (京都・烏丸丸太町)
京都商工会議所は、1954(昭和29)年竣工(設計は冨家宏泰)。ビルのエントランス部分は、以前はロビーとして使われていたそうですが、2007年にワールドコーヒーが出店。大理石の床に描かれた干支の動物たちやオリジナル溢れる天井の照明がユニークです。
ホットコーヒーを注文しました。
実はここを訪れたのは、4月のKYOTOGRAPIEで烏丸通周辺を回っていた時のことで、2月頃には、京都商工会議所が、来年春に完成する「京都経済センター(仮称)」(京都市下京区)に移転する予定で、現在の地は大阪の不動産屋に売却するというニュースが流れていました。
もし、ワールドコーヒーも移転するとしても、もうこのレトロなホテルのロビーのような絶妙な味わいはなくなってしまうかもしれませんね。
GOSPEL(京都・浄土寺)
この暑さの中でも哲学の道周辺は非常に混み合っています。でも、一本西の通り、鹿ケ谷通りに入ると、急に人出が減って静かな住宅地になります。少し歩くと蔦の絡まる洋館が見えてきます。
ヴォーリズ建築事務所が80年代に個人の邸宅として作ったものだそうで、今は「GOSPEL」というカフェになっています。
ほとんどの家具がイギリスのアンティークですが、この円形の机と椅子は日本製とのこと。
JBLの往年の名スピーカー、パラゴンが置かれています。
チキンカレーをいただきました。本格的なお味ですごく美味しい。しかもヴォリュームもすごい!
一階には「喫茶 迷子」というお店が入っていて、こちらも素晴らしいです。アンティークの家具にたくさんの古本がところ狭しと置かれており、古本は購入できます。「GOSPEL」でお腹が一杯になってしまったので、本だけ観させてもらいましたが、乱歩を始めとするその時代のミステリや映画、落語など、結構自分の趣味に近い本が並んでいて、わくわくしてしまいました。70年代のピーナツブックス2冊と木々高太郎の『人生の阿呆』(昭和30年、河出新書)を購入。次回は喫茶も利用させてもらおうと思います。
喫茶 花の木 (京都・鞍馬口)
高倉健さんが通われた喫茶店として知られる鞍馬口の「花の木」に行ってきました。
カウンターの後ろに飾られたジャン・ギャバンの特大パネルは高倉健さんから40年ほど前に贈られたものだそうです。
パリの古いカフェに潜り込んだかのよう。
古時計と素敵な壁紙とそして健さんのこのお店で撮られた写真。いやぁ~、何もかもが素晴らしい。
ここからは全く余談で、喫茶店とはまったく関係ない話なのですが、先日、神戸・新開地の名画座「CINEMA KOBE」で健さん主演の「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」を観た時のこと・・・。
このシリーズはだいたい同じパターンで進行し、悪どいヤクザの組織に最後に健さんが殴り込みに行くのが見せ場になるわけですけれど、「唐獅子牡丹」では、殴り込み直前の健さんの佇まいが、ただただ美しくて、正直びっくりしてしまったのです。
耐えに耐えたが、とか、溜まりに溜まった怒り、とかそういう感情ではなく、ただ静かにすっと心を決め、歩みだすという感じ。うまく表現できないけれど、その美しい佇まい、所作を観て、これって「芸術」じゃないか!なんて思ったのでした。
他の作品も観ているはずなんだけど、そう思ったのは今回が初めて。「唐獅子牡丹」だけが特別なのか、こちらの見方が変わったのか・・・?
そんなことを思いつつ、レモンスカッシュをいただきました。